小倉城に正対する、かまぼこ屋根——北九州市立中央図書館
プリツカー賞建築家・磯崎新が1974年に手がけた1970年代の代表作。かまぼこ形の半円筒ヴォールトが並列し、湾曲し、切断されながら全体を形作る。正面階段はまっすぐ小倉城に向けられている。三浦梅園の思想図から着想したステンドグラスまで、隅々に意味が込められた建築。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
JR西小倉駅から歩いて10分。北九州市の中心部、なだらかな傾斜を持つ勝山公園の中に、1974年竣工の図書館が立っている。設計は、建築界のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞を受賞した世界的建築家・磯崎新。磯崎自身にとって1970年代の代表作とされる建物だ。
かまぼこ形のヴォールトが連なる
**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**北九州市立中央図書館ほど、その言葉が似合う建物もない。緑青の銅板屋根を持つ、かまぼこのような半円筒形のヴォールト(アーチ状構造)が、並列になったり、湾曲したり、切断されたりしながら建物全体を形作っている。館内外どこから見ても躍動感のある曲面が続き、歩くたびに違う表情を見せる。
図書館・歴史博物館・視聴覚センターの複合施設として設計されたこの建物は、正面に続く階段がまっすぐ小倉城へ向けられているという、周到な計画のもとに立っている。ヴォールトの終点となる断面壁には、磯崎の出身地・大分県の江戸時代の思想家、三浦梅園の著書『玄語』に描かれる図式を元にアレンジしたステンドグラスが配置されている。ゴシック建築のバラ窓を思わせる丸い形で、時間や天気によって表情を変える。ガラス張りのスロープからは、そのまま小倉城を望める。
1976年には第17回建築業協会優良建築賞を受賞。半世紀近くを経た今も、北九州市のシンボル的な建築として現役で使われ続けている。
47万冊、九州初のサービスも
蔵書数は473,426冊、市内でも最大規模を誇る。持ち込みの参考書や問題集を広げて自習できる専用の「学習室」があり、座席数は162席という圧倒的なボリューム。無料の勉強場所として非常に充実している一方、コンセントは原則利用不可で、一部のパソコン優先席を除いて電源は一般開放されていない。Wi-Fiは北九州市公衆無料Wi-Fiが使えるが、1回15分・1日4回までという制限つきだ。駐車場は18台分無料で用意されているものの、利用は1時間以内と定められており、長時間の自習目的での利用はできない。自習室そのものは充実しているが、車での長居には向かない図書館、と覚えておきたい。
映画『図書館戦争』のロケ地としても知られ、磯崎新の代表作という建築的価値に加えて、サブカルチャー方面からも人が訪れる図書館になっている。
北九州市に居住・通勤・通学する人はもちろん、下関市や直方市など周辺の自治体に住む人も本を借りられる。カフェも併設されており、長時間の滞在にも対応している。
近年では「番組アーカイブネット」という、選りすぐりの放送番組を館内で視聴できるサービスを九州で初めて開始するなど、老舗の建築でありながら運営面でも新しい試みを続けている。同じ建物群には、北九州ゆかりの作家の作品を収集・展示する北九州市立文学館も入居している。
小倉城と勝山公園、あわせて歩く
図書館のすぐ目の前には小倉城がそびえる。福岡県内で唯一、天守が現存する城で、体験型の展示が充実しており外国人観光客にも人気が高い。城を囲む勝山公園は緑豊かな散策路で、図書館建築を眺めながらゆっくり歩ける。少し足を延ばせば、小倉北区出身の作家・松本清張の生涯を紹介する松本清張記念館もあり、直筆原稿や再現された書斎を見学できる。
アクセス
- JR九州鹿児島本線 西小倉駅より徒歩約10分
- 西鉄バス「北九州市役所前」「市立中央図書館・文学館前」「小倉北区役所前」下車すぐ
こんな人におすすめ
- 建築好き — 磯崎新の代表作、かまぼこ形ヴォールトとステンドグラスは必見
- 歴史・文学好き — 小倉城、松本清張記念館とあわせて小倉の歴史・文化を一日で辿れる
- 自習・作業場所を探している人 — 自習室・電源利用可、カフェ併設で長時間の滞在にも向く
- プリツカー賞建築家の仕事を辿っている人 — 磯崎新の70年代を代表する建築として、他の作品と比較しながら楽しめる