本屋とスタバと公共図書館が同居する場所——武雄市図書館
2013年、日本の公共図書館の常識を覆した「公民連携図書館」。運営はTSUTAYAを展開するCCC、館内には蔦屋書店とスターバックスが同居する。賛否を呼びながらも初年度92万人が訪れた、話題性という意味でこのシリーズ随一の一冊。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
ここまで、伊東豊雄、隈研吾、磯崎新、平田晃久——このシリーズは建築家の名前とともに図書館を巡ってきた。最後に訪ねる武雄市図書館は、少し毛色が違う。話題になったのは建築家の名前ではなく、「誰が運営するか」という一点だった。
TSUTAYAが図書館を運営するという事件
2012年、当時の武雄市長・樋渡啓祐が、代官山蔦屋書店に感銘を受けたことから始まった構想だ。武雄市は、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を図書館の指定管理者にすることを発表。約5年の改修期間を経て、2013年4月にリニューアルオープンした。建物の骨格自体は大きく変わっていないが、内装は代官山蔦屋書店を手本に一新され、公共図書館の中に民間書店「蔦屋書店」とスターバックスコーヒーが同居する、当時としては前例のない姿になった。
**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**武雄市図書館が体現するのは、建築的な造形の美しさというより、「公共施設のあり方」そのものを問い直す空間の使い方だ。1階の吹き抜けから2階へセットバックする書架、木の勾配屋根と暖色系の照明、ハイサイドライトから差し込む自然光——今どきのカフェのような居心地の良さが、公共図書館という枠組みの中に持ち込まれている。
開架部分の面積は改修前の約1.4倍、総座席数は279席(スターバックスの座席含む)に拡大。開架蔵書数は約25万冊で、リニューアル前から倍増した。館内には各エリアに最適化された無料の公衆無線LANが完備され、1階のカフェスペース付近のデスク席では持ち込みパソコン用の電源コンセントも使える。2階には「学習室(キャレル席)」と呼ばれる、調べものや自分の教材を広げて勉強できるスペースもある。開館時間も年34日休館・10時〜18時から、年中無休・9時〜21時へと大幅に拡大された。貸出カードにはCCCの「Tカード」を採用し、自動貸出機を通すとポイントが付与される仕組みも導入された(従来の図書館カードも選択可能)。敷地内には無料駐車場もあるが、市外からも人が訪れる人気スポットのため、土日祝日は満車になりやすい。
92万人が訪れた初年度、そして今も続く賛否
リニューアル初年度の来館者数は92万人を突破。従来の平均の7倍という数字が話題を呼んだ。一方で、公共図書館が民間企業に運営を委託すること自体への賛否、選書の傾向、貸出冊数の水増しをめぐる指摘など、全国的な議論を巻き起こした図書館でもある。
この賛否も含めて、「図書館とは何か」を考えさせる場所であることは間違いない。2013年にはグッドデザイン賞「金賞」も受賞している。2017年には隣接して武雄市こども図書館も開館し、2館あわせて年間約100万人が訪れている。
武雄温泉、辰野金吾の楼門とあわせて
図書館から車で5分ほどのところに、武雄温泉がある。玄関口に立つ朱塗りの楼門は、東京駅を設計した建築家・辰野金吾による大正4年(1915年)築。奥には創業400年の歴史を持つ共同浴場が今も現役で営業している。図書館めぐりのついでに、温泉と近代建築もあわせて楽しめる土地柄だ。
近くの武雄神社には、樹齢3000年ともいわれる武雄の大楠と、根元で結びついた「夫婦檜」があり、縁結びのパワースポットとしても知られている。
アクセス
- JR佐世保線 武雄温泉駅より徒歩約15分
- 長崎自動車道 武雄北方ICより車で約10分
- 駐車場あり(90台)
こんな人におすすめ
- 話題の図書館を自分の目で確かめたい人 — 賛否両論あるからこそ、実際に訪れて体感する価値がある
- カフェで長居しながら本を読みたい人 — スターバックス併設、コーヒーを飲みながら書架をめぐれる
- 武雄温泉とセットで観光したい人 — 辰野金吾設計の楼門、共同浴場、大楠まで徒歩・車で回れる
- このシリーズを通して読んでいる人 — 建築家の造形美から一転、「運営」という切り口で図書館を考える最終回にふさわしい一冊
周辺スポット
武雄温泉 楼門
東京駅を設計した辰野金吾による、大正4年築の朱塗りの楼門。武雄温泉の玄関口として今も現役で使われている。奥には創業400年の歴史を持つ共同浴場もある。
Google Mapsで見る ›武雄神社(夫婦檜)
樹齢3000年ともいわれる武雄の大楠で知られる神社。境内の夫婦檜は、根元と幹の途中で2本の檜が結びついたご神木で、縁結びのパワースポットとして人気。
Google Mapsで見る ›武雄市こども図書館
武雄市図書館に隣接する、子ども専用の図書館。木のぬくもりを感じる建築と、階段状の書架、「ひみつのへや」など遊び心のある仕掛けが特徴。九州パンケーキカフェも併設。
Google Mapsで見る ›