本を貸さない図書館、という発明——札幌市図書・情報館
日本十進分類法を捨て、「WORK」「LIFE」「ART」という独自の棚立てで本を並べる。そして本の貸し出しを行わない「課題解決型図書館」。さっぽろ創世スクエアの中に生まれた、仕事や暮らしの課題にそのまま効く図書館。建物のデザインというより、発想そのものが建築的な一館。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
Phase 3、拡張ロードマップの1館目は北海道から。JR札幌駅から歩いて約10分、劇場やアートセンターが入る複合施設「さっぽろ創世スクエア」の1・2階に、これまでのシリーズとは根本的に発想の違う図書館がある。札幌市図書・情報館だ。
本を、貸さない
**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**この図書館が楽しませてくれるのは、外観や構造の造形美ではなく、「図書館とは何か」という定義そのものへの挑戦だ。2018年10月開館のこの施設は、「はたらくをらくにする」をコンセプトに掲げる「課題解決型図書館」。そして最大の特徴は、本の貸し出しを一切行わないことにある。
館内の本はすべて日本十進分類法(NDC)ではなく、「WORK(仕事に役立つ)」「LIFE(暮らしを助ける)」「ART(芸術に触れる)」という独自の3カテゴリで並べられている。LIFEのエリアはさらに「家族」「コミュニケーション」「ジェンダー」「恋愛」「親子関係」などに細分化され、目的の情報に一直線にたどり着けるよう設計されている。借りて持ち帰るための本ではなく、その場で読んで、その場で仕事や暮らしの課題を解決するための本棚だ。「はたらくをらくにする」というコンセプトは、このシリーズで訪ねた大阪府立中之島図書館と同じ、ビジネス・調査研究に特化した図書館という系譜にある。
座席とカフェが生む、都心のサードプレイス
延床面積は約1,500平方メートル。1階は札幌・北海道の魅力に関する図書を展示するオープンな空間で、隣接するカフェに図書を持ち込んでの読書もできる。2階は約170席(うち約40席はWeb・スマートフォンから事前予約可能)を備え、会話ができるグループエリア、ガラスで仕切られ集中できるリーディングルーム、電源付きの座席など多彩な席が用意されている。館内Wi-Fi「Sapporo City Wi-Fi」は無料、2階の指定座席には無料のコンセントも完備。500種以上の雑誌、90種以上の新聞、館内限定のオンラインデータベースも使え、持ち込みパソコンでの資料作成やリサーチ用途には最適な環境が整っている。
ただし、注意点がひとつ。この図書館は「試験勉強・受験勉強」目的の自習を一律禁止している。手持ちの参考書や問題集だけを広げて勉強したい場合は、南22条西にある札幌市中央図書館など、一般の自習が許可された施設に向かう必要がある。あくまで「館内の資料や自分のパソコンを使った仕事・調査」のための場所、という線引きがはっきりしているのがこの図書館らしい。
駐車場は、入居する複合施設「札幌市民交流プラザ」の地下駐車場(286台)が利用できるが、割引はなく通常料金がかかる。
蔵書点数は約46,179点(2022年4月現在)と、公共図書館としては決して多くない。しかしその分、司書による選書とテーマ設定に力が注がれている。1区1館構想のもと、すでに大規模な札幌市中央図書館があった中央区に、あえてビジネス色の強い2館目を作るという狙いから生まれた図書館でもある。本の貸し出しは行わないが、札幌市内の他の図書館からネット予約した本の受け取り・返却カウンターは設置されている。
時計台と赤レンガ、札幌の近代建築とあわせて
図書・情報館の周辺には、明治期に建てられた近代建築が集まっている。徒歩8分の札幌市時計台は、1878年築・現存する日本最古の木造時計台。同じく徒歩8分の北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)は、アメリカ風ネオ・バロック様式の赤レンガ建築で、約250万個の煉瓦を使用した左右対称の外観が見どころだ。徒歩5分の大通公園を挟んで歩けば、札幌の近代化の歴史を建築でたどる散策コースになる。
アクセス
- JR函館本線・札幌市営地下鉄 札幌駅より徒歩約10分
- 札幌市営地下鉄南北線・東西線・東豊線 大通駅より徒歩約3分
こんな人におすすめ
- 仕事や暮らしの課題を抱えている人 — WORK/LIFE/ARTという独自分類で、目的に直結した本と出会える
- カフェ感覚で作業したい人 — 電源・Wi-Fi完備、隣接カフェへの図書持ち込みも可能(※試験勉強目的の自習は不可)
- 「図書館とは何か」を考えたい人 — 貸出なしという逆転の発想そのものが、このシリーズのテーマにふさわしい
- 札幌の近代建築を巡りたい人 — 時計台、赤れんが庁舎まで徒歩圏内
周辺スポット
北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)
1888年築、アメリカ風ネオ・バロック様式の赤レンガ建築。約250万個の煉瓦を使用し、ドーム屋根と左右対称の外観が印象的。館内は資料館として無料公開。
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