津波で失われた図書館が、南三陸杉で還ってきた——南三陸町図書館
東日本大震災の津波で全壊した公民館と図書館。8年後の2019年、南三陸杉をふんだんに使った木造の生涯学習センターとして再建された。設計は八重樫直人+ノルムナルオフィス。派手な造形ではなく、住宅のスケール感を積み重ねた「家にいるような」空間が、静かに町の日常を支えている。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
2011年3月11日、東日本大震災の津波は、宮城県南三陸町の中央公民館と図書館を跡形もなく飲み込んだ。それから8年、2019年4月25日、両方の機能を併せ持つ「南三陸町生涯学習センター」として、図書館は町に還ってきた。
家にいるような、木造のスケール
**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**南三陸町図書館が見せてくれるのは、これまで巡ってきた著名建築家の造形美とは違う種類の建築だ。設計を手がけたのは八重樫直人+ノルムナルオフィス、日新設計。延床面積約1,780平方メートル、地上1階建ての木造の建物は、国道沿いに立つ生涯学習施設として計画された。
この建物のコンセプトは、利用者が「まるで自宅で過ごしているかのような」場所をつくること。そのために、住宅と同じスケール感に分割された空間がいくつも寄り集まる構成になっている。南三陸杉をふんだんに使った館内には、木の香りが漂う。西側に新しく整備された住宅団地の入口にあたる立地で、人の流れを呼び込む役割も担っている。
館内には図書館・公民館の機能に加え、研修室、調理実習室、和室、キッズスペースまで揃う。ラムサール条約に登録された志津川湾を紹介するパネルや、南三陸の映像が流れるコーナーもあり、単なる本の置き場ではなく、町の記憶と自然を伝える場所としても機能している。勉強ができるスペースも用意されており、集中しやすい環境が整っている。
蔵書3万5千冊、ゼロからの再出発
蔵書数は約3万5,000冊、収容能力としては最大約10万4,000冊まで対応可能な設計になっている。震災で図書館の蔵書約3万冊をほぼ全て失った後、全国からの支援や寄贈を受けながら、この規模まで積み上げてきた歴史がある。開館当初は仮設図書館、コミュニティ図書館「歌津図書館・魚竜」などを経て、8年がかりでこの生涯学習センターにたどり着いた。派手な建築的仕掛けはなくとも、一冊一冊が積み重ねられてきた過程を思うと、この本棚の重みは他のどの図書館とも違って見えてくる。
館内では無料の公衆無線LANが使え、一部の学習用座席では電源も利用できる。独立した専用の自習室こそないが、館内には勉強ができる学習スペースが用意されている。駐車場は志津川公民館と共用の無料駐車場を利用できる。
復興の今を歩く、さんさん商店街と隈研吾建築
図書館から車で8分ほどのところに、震災復興のシンボルとして再建された南三陸さんさん商店街がある。新鮮な海の幸を扱う飲食店や土産物店が並び、南三陸グルメを楽しめる。すぐ隣には、建築家・隈研吾が設計した震災伝承施設「南三陸311メモリアル」があり、映像や語り部の証言を通じて震災の記憶を伝えている。このシリーズでは佐賀・武雄温泉の楼門やあちこちで隈研吾建築に触れてきたが、ここでの仕事はまったく違う顔を見せる。少し足を延ばせば、2018年にラムサール条約湿地に登録された志津川湾もあり、穏やかな入り江の風景が広がる。
アクセス
- BRT気仙沼線 志津川駅より徒歩約13分
- 駐車場あり
こんな人におすすめ
- 震災復興の歩みに関心がある人 — 図書館の再建そのものが、町の8年間の物語を映している
- 木造建築が好きな人 — 南三陸杉を使った、住宅スケールの落ち着いた空間構成
- 隈研吾建築を巡っている人 — 311メモリアルとあわせて、災害伝承という文脈での仕事を見られる
- 静かに勉強・読書したい人 — 大きな観光地ではない分、落ち着いて過ごせる環境が整っている
周辺スポット
南三陸さんさん商店街
震災復興のシンボルとして再建された商店街。新鮮な海の幸を扱う飲食店や土産物店が並び、地元設計事務所による木造の建物群も見どころ。南三陸グルメの中心地。
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建築家・隈研吾設計の震災伝承施設。映像や語り部の証言を通じて、震災の記憶と教訓を次世代に伝える。参加型のワークショップ形式の展示が特徴。
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