旧呉服屋の梁を残した、螺旋階段の本の森——こども本の森 遠野
「東北の復興のシンボルは子どもたちの未来である」——安藤忠雄がその想いをカタチにし、遠野市に寄贈した施設。築120年の旧呉服屋の梁と柱を残しながら、中央に螺旋階段がそびえる吹き抜けの閲覧室を組み込んだ。カッパ淵や遠野物語で知られる民話の里に、大阪・中之島に続く「こども本の森」2館目が立つ。

※画像はAIによるイメージです。実際とは異なります。
柳田國男『遠野物語』の舞台として知られる岩手県遠野市。カッパや座敷童子の伝承が今も息づくこの町の中心通りに、令和3年(2021年)7月、建築家・安藤忠雄が設計し、遠野市に寄贈した子ども向けの図書施設が生まれた。「こども本の森 遠野」だ。
「東北の復興のシンボルは子どもたちの未来である」
きっかけは、安藤忠雄自身の提唱だった。「東北の復興のシンボルは子どもたちの未来である」「子どもたちの未来のためには本・読書が大事ではないか」——この想いをカタチにするため、安藤氏が施設を設計・整備し、遠野市に寄贈した。建設費約2億円は安藤氏自身が負担し、市は児童図書と運営基金の寄付を全国から募った。大阪・中之島の「こども本の森 中之島」に続く、全国で2番目の「こども本の森」だ。
**このシリーズは「図書館(建物)を楽しむ」ことをテーマにしている。**遠野が見せてくれるのは、新築ではなく「継承」の建築だ。敷地はかつて「旧三田屋」という明治33年(1900年)創業の呉服屋があった場所。築120年のこの建物を解体しながら、梁や柱の一部を再利用し、外観のイメージを忠実に再現した。一歩中に入ると、街並みに調和する外観とは対照的に、安藤忠雄らしいコンクリートと美しい木組みが融合した、天井まで吹き抜ける本の空間が広がる。中央には螺旋階段がそびえ、木造2階建て・延床面積約500平方メートルの中に、歴史の継承と安藤建築らしさが同居している。
館内は土足禁止。フローリングや畳敷きのスペースがあり、小さな子どもから大人まで、床に寝転がったりくつろいだりしながら自由に本の世界に浸れる。
13のテーマで、樹形図のように並ぶ本棚
館内の本は「遠野と東北」「世界を見渡す」に加え、「カッパ・天狗・妖怪」「異世界」など、民話のふるさと・遠野ならではのテーマを含む13のジャンルに沿って配架されている。絵本や児童文学、幼年童話を中心に、図鑑や写真集、アートブック、海外の本まで、まるで樹形図のように広がる本棚は、どんな年齢の人にも新しい発見をもたらしてくれる。選書を手がけたのはブックディレクターの幅允孝、名誉館長は遠野市出身で芥川賞作家の若竹千佐子。世界各国の大使館から寄贈された本の中には、世界を一望できる本や未来を予測する本もあるという。
入館は無料、予約不要。ただし本の貸し出しは行っておらず、館内での閲覧のみ。混雑時の閲覧席は子どもの利用が優先される。蔵書数は全国からの寄贈本を中心に約13,000冊。
館内Wi-Fiは無料で使えるが、学習や作業目的で使える電源コンセントは一般開放されていない。持ち込み教科書・参考書での「試験勉強」目的の自習も一律禁止されている。あくまで子どもたちがのびのびと読書体験を楽しむための施設、という位置づけが徹底されている。駐車場は敷地内に11〜13台分(無料)用意されている。
カッパ淵と伝承園、民話の里を歩く
図書館から車で15分ほどのところに、『遠野物語』に登場する河童伝説の発祥地・カッパ淵がある。すぐ近くには、茅葺きの曲り家を移築した野外博物館・伝承園もあり、オシラサマを祀る御蚕神堂など独特の空間が広がる。徒歩10分ほどの遠野城下町資料館では、遠野南部氏ゆかりの武具や生活用品を通じて、城下町としての遠野の歴史をコンパクトに学べる。図書館建築と民話の世界、両方を一日で味わえる町だ。
アクセス
- JR釜石線 遠野駅より徒歩約10分
- 駐車場あり
こんな人におすすめ
- 安藤忠雄建築を巡っている人 — 大阪・中之島に続く「こども本の森」シリーズ2館目。新築ではなく歴史的建物の継承という切り口が独特
- 子ども連れ — 13のテーマ別本棚、世界各国からの寄贈本など、年齢を問わず楽しめる
- 民話・伝承好き — カッパ淵、伝承園と合わせて『遠野物語』の世界を体感できる
- 震災復興の物語に関心がある人 — 「東北の復興のシンボルは子どもたちの未来」という設立の想いを知って訪れると、また違う見え方をする
周辺スポット
伝承園
曲り家など遠野の伝統的な茅葺き民家を移築した野外博物館。オシラサマを祀る御蚕神堂には人形が壁一面に並び、独特の雰囲気を放つ。カッパ淵とセットで巡るのが定番コース。
Google Mapsで見る ›遠野城下町資料館
遠野南部氏ゆかりの武具や生活用品を展示する小規模な資料館。遠野物語ミュージアムのチケットで入館でき、城下町として栄えた遠野の歴史をコンパクトに学べる。
Google Mapsで見る ›