路面電車の城下町で出会った、中高生が育てた本棚——松山市立中央図書館
路面電車が走る城下町に、中高生の声で2000冊まで育った青春本棚がある。

※トップ画像はAIで生成したイメージです。実際の内観とは異なります。
松山に着いたのは、晴れた日だった。職業訓練のために訪れた町だったから、観光気分というよりは、新しいことが始まる前のあの、少し緊張したワクワク感を抱えて降り立った。でも松山は、そんな気持ちをほぐしてくれる町だった。路面電車がゆっくりと道を走り、城が街の真ん中に見える。「また来たいな」と思えた数少ない町のひとつだ。
路面電車が走る城下町へ
緑が多く、中心街は程よく栄えていて、派手すぎず寂しすぎない。滞在中、道後温泉へ向かった。日本最古級と言われる温泉で、スタジオジブリが『千と千尋の神隠し』制作時にスケッチに訪れたことでも知られている。古い建築と湯けむりの雰囲気は、たしかにあの世界観に近かった。道後温泉本館のお風呂には入ったが、周りの旅館には泊まれず、店先に開放されている足湯だけを堪能させてもらった。
坊っちゃん団子を買って、路面電車に乗って、松山城を見上げて、鯛めしを食べた。そして図書館に立ち寄った。それが、思いのほかよかった。
旅の途中で寄った図書館が、想像以上だった
統合コミュニティセンターに併設された図書館で、駐車場はそのまま共用で使える。平日と土日祝で料金が異なるが、上限は650円とリーズナブルだ。
建物に入ると、漫画もライトノベルも揃っていて、思いのほか充実している。勉強のために訪れたのに、ついそちらに目が向いてしまった。
青春本棚――中高生と図書館が一緒に育てた2000冊
この図書館で一番印象に残ったのが、青春本棚だ。
中高生を対象に聞き取り調査を行い、「読みたい本」「好きな本」を集めた特設コーナーで、開始当初は800冊だったものが、今では2000冊を超えるまでに育っている。
司書や大人が「これを読むべき」と選んだ本ではなく、実際に10代の声から生まれた本棚。でもそれを形にしたのは、調査を続けてきた図書館スタッフの地道な努力があってこそだ。並んでいる本のラインナップを眺めているだけで、今の中高生が何を感じ、何を求めているかが伝わってくるような気がした。
図書館って、地域の人たちが一緒に育てるものなんだな、とあらためて思った。
図書館の使い方・基本情報
松山市立中央図書館は、統合コミュニティセンター内にある。蔵書は一般書から漫画、ライトノベルまで幅広く、DVDの貸し出しも行っている。棚を眺めていたら、エヴァンゲリオンを発見した。図書館でエヴァに出会うとは思っていなかった。
※以下は松山市立中央図書館より提供いただいた令和8年4月1日時点の正式情報です。
| 項目 | 内容 | |------|------| | 住所 | 愛媛県松山市湊町七丁目5番地(松山市総合コミュニティセンター内) | | 開館時間 | 9:30〜20:00 | | 休館日 | 毎週月曜日(祝日の場合は開館)・月末日(月・土・日・祝の場合は直前の平日)・特別整理期間・年末年始 | | 駐車場 | 東駐車場:平日100円/70分・土日祝100円/45分・上限なし/西駐車場:平日100円/70分・土日祝100円/45分・一日上限650円 | | 蔵書数 | 511,547冊(内 視聴覚資料 33,230点) | | 電源 | 利用可能席2席 | | Wi-Fi | あり | | 漫画・ラノベ | あり | | DVD貸出 | あり |
松山を歩く
道後温泉と、無料の足湯
道後温泉は、日本最古級の温泉地だ。スタジオジブリが『千と千尋の神隠し』制作時にスケッチに訪れたことでも知られており、古い建築と漂う湯けむりは、たしかにあの世界観に近い雰囲気がある。
道後温泉本館のお風呂はもちろんおすすめしたいが、周辺の旅館のお風呂も格別だ。温泉街の旅館の中には、店先に足湯を開放しているところも多く、宿泊前のちょっとした立ち寄りにもちょうどいい。どの旅館の足湯が自分に合うか、湯めぐりしながら次の宿選びの参考にしてみるのも面白い。
お湯に足を浸けながら、観光客や地元の人たちが行き交う景色をぼんやり眺める時間は、贅沢な温泉宿に泊まるのとはまた別の、静かな豊かさがあった。
道後温泉の近くでは、坊っちゃん団子も楽しめる。三色の団子が串に刺さったシンプルなお菓子だが、松山らしさが詰まった一品だ。温泉街を歩きながら食べるのがちょうどいい。
路面電車――残してほしい、日本の風景
松山には路面電車が走っている。
日本全国で路面電車が残っている都市は、今やごくわずかだ。車社会の波に飲まれ、多くの町で廃線になっていった中、松山の路面電車は今も市民の足として現役で走り続けている。
乗ってみると、スピードはゆっくりで、街の中をじっくり眺めながら移動できる。目的地に急ぐためだけの乗り物ではなく、街と一緒に流れるような感覚がある。観光で来た人にも、地元の人にも、同じように開かれている乗り物だと思った。
こういう乗り物が、これからも残っていてほしいと素直に思う。
松山城
市街地の真ん中にそびえる松山城は、現存十二天守のひとつ。ロープウェイで登ることができ、頂上からは松山市街を一望できる。路面電車と城が同じ風景に収まる景色は、松山らしさが詰まっている。
鯛めし
愛媛を代表する郷土料理。松山風は炊き込みご飯スタイル、宇和島風は新鮮な鯛の刺身を卵醤油だれでご飯にのせるスタイルで、両方まったく別の料理と言っていい。どちらも美味い。
こんな人におすすめ
- 道後温泉や松山城など観光スポットと一緒に図書館を楽しみたい人
- 中高生と図書館が育てたユニークなコーナーを見てみたい人
- 漫画・ラノベ・DVDを無料で楽しみたい人
- 路面電車に乗りながら城下町の空気を味わいたい人
- 旅のついでに図書館を巡っている人
路面電車、道後温泉、松山城、そして青春本棚。これだけ揃った城下町の図書館は、なかなかない。