世界遺産のまちの、ヒノキ香る駅前図書館——熊野市立図書館
鬼ヶ城、獅子岩、花の窟、熊野古道——世界遺産が凝縮された熊野市。その玄関口・JR熊野市駅前に、熊野産ヒノキをふんだんに使った開放的な図書館がある。リュックを背負った巡礼者と地元の人が同じ空間で本を開く、旅と暮らしが交差する場所だ。

AIによるイメージです。実際とは異なります。
世界遺産のまちの、ヒノキ香る駅前図書館——熊野市立図書館
三重県の南端近く、人口約2万人の熊野市。この小さなまちには、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録された名所が驚くほど凝縮されている。鬼ヶ城、獅子岩、花の窟、七里御浜、そして熊野古道伊勢路——浜沿いの狭いエリアに、これほど世界遺産が集まる場所は全国でも珍しい。
その玄関口、JR熊野市駅の目の前に、熊野市立図書館はある。
熊野産ヒノキの、天井の高い空間
図書館が入る熊野市文化交流センターは、2009年10月に開館した2階建ての複合施設。熊野産のヒノキ材をふんだんに用いた天井の高い施設で、太陽光を取り込めるように設計されている。地元の木に包まれた館内は、深呼吸したくなるような開放感だ。
図書館は1階に一般ゾーンと児童ゾーン、2階に貴重書を収蔵する「松岡文庫」を配置。館内には140席の閲覧席があり、窓辺のカウンター席や屋外のテーブル席など、来館者の好みに応じて読書をする場所が選べるのがうれしい。
図書にはICタグが付され、自動貸出機を設置するなど、最新設備を導入している。蔵書数は約15万冊。漫画(ハイキュー!!が揃っているのは嬉しい)やライトノベルのコーナーもあり、館内ではWi-Fiも利用できる。開館によって利用者数は旧館時代の3倍に増加したというから、まちの読書文化を大きく変えた図書館と言っていい。
なお、持ち込み学習は原則不可となっている点には注意。試験期間などの特定の日には一部の席が開放される場合があるので、受験生は事前に確認を。
そして何より印象的なのが、利用者の顔ぶれだ。熊野市駅に隣接しているため市内外から利用者が訪れており、特に休日は熊野古道を訪れるリュックを背負った観光客の姿が多く見られるという。巡礼の旅人と地元の人が、同じ屋根の下で本を開く——熊野らしい光景がここにある。
図書館への道が、雛人形の道になる
この施設には、季節限定のもうひとつの名物がある。センターの長い通路が、3月には雛人形、5月には五月人形の展示会場に変わるのだ。
図書館へ向かう通路の両側に、赤い毛氈の段飾りがずらりと連なる光景は壮観のひと言。地域から寄せられた無数の人形たちが、本を借りに来た人、熊野古道へ向かう旅人を出迎える。「図書館への道」そのものが展示空間になる——この演出は、通路の長い駅前複合施設ならではだ。桃の節句・端午の節句の時期に熊野を訪れるなら、ぜひこの「人形の道」を歩いてから本棚へ向かってほしい。
鬼の城と、獅子の岩と、いにしえの道
図書館を出れば、世界遺産はすぐそこだ。
車で5分の鬼ヶ城は、数度にわたる急激な地盤の隆起と風・海蝕によって造り出された、他に類を見ない奇岩地帯。1.2kmにわたり大小無数の洞窟があり、断崖沿いの遊歩道はスリル満点。平安時代初期には坂上田村麻呂が、鬼と恐れられた海賊「多娥丸」をここで征討したという伝説が残る。
そこから七里御浜方面へ少し走ると、獅子岩が見えてくる。高さ約25m、熊野灘に向かって吠える獅子のような奇岩で、上流に位置する大馬神社の狛犬として敬愛されてきた。このため、大馬神社には今も狛犬が設置されていないという話がいい。5月中旬からの約1ヶ月は早朝に朝日を咥え、11月・12月の夕刻には満月を咥える姿が見られる——カメラを持って通いたくなる岩だ。
そして熊野古道。市内の松本峠はほとんどの道に美しい石畳が残り、竹林に囲まれた峠では等身大ほどの大きなお地蔵様が出迎えてくれる。登り口から峠まで約500mと、熊野古道の雰囲気に比較的気軽に触れられる人気コースだ。図書館で熊野の歴史を予習してから歩けば、石畳の一つひとつが違って見えるはずだ。
基本情報
| 項目 | 内容 | |---|---| | 住所 | 三重県熊野市井戸町643番地2(熊野市文化交流センター内) | | 開館時間 | 10:00〜19:00 | | 休館日 | 月曜日、年末年始(12/29〜1/3)、特別整理期間 | | アクセス | JR紀勢本線・熊野市駅からすぐ | | 蔵書数 | 約15万冊 | | 駐車場 | あり(43台) | | Wi-Fi | あり | | 電源 | なし | | 持ち込み学習 | 原則不可(試験期間等に一部開放の場合あり) | | 公式サイト | 熊野市立図書館 |
こんな人におすすめ
- 熊野古道・世界遺産巡りの旅の途中で立ち寄りたい人
- 木の香りに包まれた図書館建築が好きな人
- 3月・5月の「人形の道」など、季節の風物詩と一緒に楽しみたい人
- 鬼ヶ城・獅子岩など熊野のダイナミックな自然を楽しみたい人
周辺スポット
鬼ヶ城
熊野灘の荒波と地震の隆起が生んだ、約1.2km続く奇岩地帯。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部で、国の名勝・天然記念物。断崖の遊歩道はスリル満点で、桜の名所としても知られる。坂上田村麻呂の鬼退治伝説が残る。
Google Mapsで見る ›獅子岩・七里御浜
熊野灘に向かって吠える獅子のような高さ25mの奇岩。世界遺産・国の名勝天然記念物。5〜6月の早朝には朝日を、11〜12月の夕刻には満月を「咥える」姿が見られる。獅子岩から新宮まで約25km続く七里御浜も世界遺産だ。
Google Mapsで見る ›熊野古道 松本峠
熊野古道伊勢路の中でも手軽に歩ける人気の峠道。苔むした美しい石畳が残り、竹林の峠では等身大のお地蔵様が出迎える。峠近くの東屋からは七里御浜と熊野灘の大パノラマが一望できる。登り口から峠まで約500m。
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